合算請求書をインボイスとして出す:記載事項と端数処理
月末締めで1か月分をまとめた請求書も、記載事項を満たせば適格請求書として交付できます。つまずきやすいのは消費税の端数処理です。明細が増えるほど「明細ごとに税額を出して足す」やり方に寄りたくなりますが、その方法は認められていません。
合算請求書に必要な記載事項
適格請求書として必要なのは次の6項目です。
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称、および登録番号(T+13桁)
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨を含む)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額、および適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称(宛名)
2の取引年月日について、国税庁のQ&A(問57)には「一定期間の取引をまとめた請求書を適格請求書として交付する場合の記載例」が載っており、そこでは取引年月日が「10月分(10/1〜10/31)」と期間で記載されています。締め請求はこの形に当てはまります。
ただし、まとめてよいのは日付の書き方であって、金額の計算ではありません。4と5は「税率ごとに区分した合計」なので、1か月分の取引を税率別に積み上げた数字が要ります。
端数処理は「一の適格請求書につき、税率ごとに1回」
国税庁のQ&A(問57)では、消費税額等に1円未満の端数が生じる場合、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行うと説明されています(消令70の10、基通1-8-15)。
あわせて、個々の商品ごとに消費税額等を計算して端数処理し、その合計額を「税率ごとに区分した消費税額等」として記載することは認められないとされています。合算請求書では明細が数十行になることもあるため、この点がそのまま効いてきます。
同じ取引でも金額が変わる
税抜999円の商品(10%・端数処理は切捨て)が、1か月で7行ぶん並んだ請求書で比べます。
| やり方 | 計算 | 消費税額 |
|---|---|---|
| 明細ごとに計算して合計(認められない) | 切捨(999×0.1)×7 = 99×7 | 693 |
| 税率ごとに1回(正しい) | 切捨(6,993×0.1) | 699 |
端数が1円未満でも、行数だけ積み上がります。明細100行の請求書なら数十円の差になり、取引先の仕入税額控除の金額もその分変わります。
納品書に税額を書いているとき
納品書と請求書の2枚で記載事項を満たす形も認められています。このとき端数処理の回数はどちらに「税率ごとに区分した消費税額等」を書いたかで決まります。国税庁のQ&A(問67)では、納品書に消費税額等を記載する場合は納品書につき税率ごとに1回、と説明されています。
納品書ごとに税額を確定しているなら、請求書側でそれを合計するのは自然です。逆に、請求書側でも1か月分から計算し直すと、納品書の合計と合わなくなります。どちらで確定させるかを決めて、片方に寄せるのが安全です。
明細の税抜を足しても内訳と合わない、という相談
ここからは表示の話です。税額の計算とは別に、明細に税抜金額を印字している請求書で、その列を足しても税率ごとの合計と一致しないことがあります。税込で金額が決まっている取引(内税)で起きます。
内税では、税率ごとの内訳は「税込合計から税率ごとに1回で税額を出し、残りを税抜とする」計算になります。一方、明細に出す税抜は注文ごとに計算された値です。丸める回数が違うので、両者は一般には一致しません。
| 8%対象 税抜 | |
|---|---|
| 明細の列を足し上げた額 | 24,351 |
| 税率別内訳に印字される額 | 24,352 |
請求する金額(税込)はどちらでも同じなので、支払額は変わりません。それでも、取引先の経理が別紙の明細を電卓で足すと1円合わない、という形で表に出ます。問い合わせを生むには十分です。
直す方向は一つです。内訳は適格請求書として正しい値であり、取引先の仕入税額控除の根拠でもあるので、内訳は動かさず、明細側の表示を内訳に合わせて端数を配分します。合わせるのは表示であって、税額の計算方法ではありません。
端数処理の方法は任意、ただし取引先と揃える
切上げ・切捨て・四捨五入のどれを使うかは事業者の任意とされています。法律上はどれでも構いませんが、卸取引では取引先の支払通知書と方法が違うと毎月1〜2円ずれます。金額としては小さくても、毎月照合する側の手間になります。取引条件を決めるときに、締め日・支払サイトと一緒に確認しておくと後が楽です。
ここに書いたのは国税庁の公開資料を踏まえた実務の整理であり、税務判断ではありません。自社の処理については顧問税理士にご確認ください。
アプリでの扱い
私たちが開発している 掛売り請求 ツナギメ(Shopifyアプリ)は、この記事の内容をそのまま実装しています。
- 端数処理は税率ごとに1回。明細には税抜だけを印字し、消費税は税率別内訳に一本化
- 内税・外税のどちらで金額が決まっているかを注文ごとに保持し、内税は税込を、外税は税抜を基準に計算
- 明細の税抜は内訳に合わせて端数を配分するため、明細の列を足すと内訳と一致する
- 端数処理の方法(切捨て・切上げ・四捨五入)は自店の既定に加えて取引先ごとに指定可能
- 発行済みの請求書は、あとで設定を変えても税額が動かない(発行時の値で保存)
- 登録番号・取引年月日・軽減税率である旨・宛名を含め、記載事項を満たした様式で発行
よくある質問
1か月分をまとめた請求書でも適格請求書になりますか
記載事項を満たしていれば、一定期間をまとめた請求書でも適格請求書として交付できます。国税庁のQ&A(問57)にも「一定期間の取引をまとめた請求書を適格請求書として交付する場合の記載例」が示されており、取引年月日は「10月分(10/1〜10/31)」のように期間で記載されています。ただし消費税額等の端数処理は、その1枚につき税率ごとに1回になります。
明細ごとに消費税を計算して合計してはいけないのですか
国税庁のQ&A(問57)では、一の適格請求書に記載されている個々の商品ごとに消費税額等を計算して端数処理し、その合計額を「税率ごとに区分した消費税額等」として記載することは認められない、と説明されています。端数処理は一の適格請求書につき、税率ごとに1回です。
明細の税抜金額を足しても、内訳の税抜合計と一致しません
税込で金額が決まっている(内税)取引では起こりえます。内訳は税込合計から税率ごとに1回で税額を出し、残りを税抜とするのに対し、明細の税抜は注文ごとに計算された値だからです。内訳のほうが適格請求書として正しい値なので、明細側の表示を内訳に合わせて端数を配分します。
端数処理は切り捨て・四捨五入のどれを使うべきですか
切上げ・切捨て・四捨五入など任意の方法で行うこととされています。ただし取引先の支払通知書と方法が違うと毎月1〜2円の差が出るため、卸取引では取引先と取り決めておくのが実務的です。